税理士が教える相続税申告の手続きの流れ|初回面談からアフターフォローまで
相続税の相談は、多くの方にとって「人生で一度あるかないか」のとても特別な出来事です。しかもその多くは、親や配偶者など大切な家族が亡くなった直後という、精神的な負担が最も大きいタイミングで始まります。葬儀の準備、親族への連絡、勤務先や学校への調整など、日常とはまったく違うタスクが一気に押し寄せる中で、「相続税の申告はいつまでに何をすればいいのか」「そもそも自分のケースは相続税がかかるのか」といった疑問が次々と湧いてきます。初めてのケースでは、どのタイミングで誰に相談・依頼すべきかを判断すること自体が負担になりやすく、戸惑いを覚える方も少なくありません。
相続税申告には、死亡日(相続開始日)から「10か月以内」という明確な期限が定められています。さらに、相続放棄や限定承認といった重要な選択には「3か月以内」という別の期限もあり、のんびり情報収集をしているうちに、気付いたときには期限が目前に迫っていたというケースも珍しくありません。インターネットや書籍にはさまざまな情報が載っていますが、ご自身のケースにそのまま当てはめられるとは限らず、「調べれば調べるほど不安が増えていく」という声もよく耳にします。相続財産の内容や家族構成、節税の余地の有無によっても取るべき選択肢は変わるため、早めに専門家へ事前相談しておくことが重要です。
そこで本記事では、税理士法人ヤマトが、相続税の初回相談から申告・納付、そして申告後のアフターフォローまでの流れを、はじめての方にも分かりやすいように整理してご紹介します。専門的な用語はできるだけかみ砕きながら、実務でつまずきやすいポイントや、早めに押さえておきたい考え方も交えて解説していきます。
「まずは全体像をつかみたい」「自分の家庭ではどの順番で動けばよいのか知りたい」という方は、ぜひご自身の状況を思い浮かべながら読み進めてみてください。なお、ここでの説明は一般的な流れのご案内であり、個別の事情に応じた具体的判断は、別途専門家への相談・依頼をおすすめします。
本記事の流れは、第一章で相続税相談の全体像を押さえ、第二章で相続発生直後から初回面談までの初期ステップを整理します。第三章では、契約後に本格的に始まる「書類収集と財産調査」の進め方を、チェックリスト的な視点で解説し、第四章で財産目録と相続税評価のポイントを取り上げます。第五章では、申告書作成から納税方法の検討・スケジュール管理に触れ、第六章では申告後のアフターフォローや今後の相続対策についてご説明します。相続に関するご相談は、お電話やお問い合わせフォームからの予約も可能ですので、読み進めていく中で不安や疑問があれば、いつでも活用していただけます。
相続税申告という一見複雑な手続きも、「いくつかの大きなステップの組み合わせ」として捉え直すことで、全体像がぐっと見えやすくなります。
ゴールの見えないマラソンは誰にとってもつらいものですが、「今は全体の中のどの段階にいて、次に何をすればいいのか」が分かれば、心理的な負担は大きく軽減されます。本記事が、そのための「地図」としてお役に立てば幸いです。

第一章 相続税相談の全体像をつかむ
相続税申告は「連続したプロジェクト」と考える
相続税申告をスムーズに進めるための最初のポイントは、「相続税申告は単発の作業ではなく、いくつもの工程が連続したプロジェクトである」と捉えることです。実際の現場では、
相続人の確定、相続財産の洗い出し、評価方法の検討、遺産分割の話し合い、申告書の作成、納税資金の準備など、どの工程も欠かすことができず、一つの遅れが全体のスケジュールに影響してきます。
税理士法人ヤマトでは、最初の相談の段階で、死亡日を起点とした大まかなタイムラインを一緒に作成し、「いつまでにどこまで終わっていればよいか」を共有するようにしています。
全体のイメージとしては、次のようなステップをイメージしておくと分かりやすくなります。以下に示す流れは、あくまで代表的なパターンですが、多くの案件で共通するプロセスです。
①相続発生の確認と初期手続き
②税理士への初回相談・ヒアリング
③業務内容と報酬の合意(契約)
④必要書類の収集と財産調査
⑤財産評価と財産目録の作成
⑥遺産分割協議のサポート
⑦相続税申告書の作成と提出
⑧納税方法の検討と実行
⑨申告後のアフターフォローと将来対策
もちろん、これらが完全に直線的に進むわけではなく、並行して進む作業も多くあります。それでも、「いま自分たちは9つのうちのどの段階にいるのか」が見えるだけで、抱えている不安の質が変わり、次の一歩が踏み出しやすくなります。
最初に全体のステップをざっくりと地図にしておくだけでも、「何から手を付ければいいか分からない」状態から抜け出しやすくなります。
法人として多くの相続案件を扱ってきた税理士法人ヤマトの実績も踏まえつつ、ご自身のペースで進めていきましょう。
「誰に相談するか」が結果を左右する
相続税相談では、「誰に相談するか」そのものが大きな分岐点になります。税理士と一口に言っても、法人税や所得税を中心に扱う事務所もあれば、相続税に特化している事務所もあります。相続税は案件ごとに事情が異なり、土地評価のノウハウや税務調査の傾向、生前対策・節税との連携といった経験値が大きくものを言う分野です。
「顧問を頼んでいる税理士だから」「自宅から近いから」という理由だけで相続税の相談先を決めてしまうと、後から「もっと早く専門の事務所に相談しておけばよかった」と感じるケースもあります。
相談先を検討する際には、少なくとも次の点を確認しておくと安心です。
- 年間でどのくらいの相続案件を扱っているか(相続業務の経験値・実績)
- 相続税に特化したチームや担当者がいるか
- 他士業(司法書士・弁護士など)との連携体制があるか
- 報酬体系・見積りの説明が明確かどうか
相談先を選ぶ段階から、ぜひ慎重に検討してみてください。初回相談の時には、どこまでサービスとして行い、どこからが有料業務になるのかについても明確に説明を受けると安心です。

第二章 初回面談までに準備しておきたいこと
相続発生直後に意識しておきたい「保管」と「メモ」
相続発生直後は、葬儀社との打ち合わせ、市区町村への死亡届、勤務先や学校への連絡など、日常とは違う手続きが続きます。この時期にすべてを完璧にこなす必要はありませんが、「あとで相続税申告に使うかもしれない情報や書類」を意識して残しておくことが大切です。
例えば、葬式費用の領収書、病院への支払明細、火葬許可証の控えなどは、相続税の計算や準確定申告、医療費控除の検討に役立つことがあります。分からない書類であっても、ひとまず一か所にまとめて保管しておき、初回面談の際に税理士に見てもらうと安心です。
税理士法人ヤマトでは、相続手続きの初期に何をどのように保管しておくべきかについても、具体的に案内を行い、負担が少なくなるようサポートしています。
また、初回面談の前に、簡単で構わないので「相続関係メモ」を作成しておくと、相談が非常にスムーズになります。
例えば、次のような項目をメモにしておきましょう。
- 被相続人の氏名・生年月日・死亡日
- 最後の住所・本籍地
- 配偶者の有無、子どもの人数(前妻・前夫との間の子がいるかどうか)
- 両親や祖父母が存命かどうか、兄弟姉妹の状況 など
すべてを完璧に書き出す必要はありませんが、「把握している範囲」を整理しておくだけでも、税理士が法定相続人の範囲や必要となる戸籍の種類をイメージしやすくなります。
資料が完璧に揃っていなくても構いません。むしろ、「分からないことを洗い出す場」として活用していただければ十分です。
お問い合わせの時点では、ラインやメールでの無料相談をご利用いただくことも可能です。
相続税がかかりそうかどうかを大まかに把握する
相続税の検討をスムーズにするためには、「相続税がかかりそうかどうか」の大まかな目安を知っておくことも役立ちます。相続税の基礎控除額は、
「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
例えば、相続人が配偶者と子ども二人(合計3人)の場合、基礎控除額は「3,000万円+600万円×3=4,800万円」となります。
不動産の評価額や預貯金、有価証券などをざっくりと合計してみて、この基礎控除を大きく超えそうであれば、早めに相続税申告を前提とした準備を始めるのが安全です。特に、固定資産税評価額が高い都市部の土地を複数所有しているケースでは、想像以上に相続財産の評価額が大きくなることもあります。
一方で、明らかに基礎控除を下回る場合でも、「本当に漏れはないか」「二次相続に備えて今できることはないか」を確認するために、一度は専門家へ相談しておく価値があります。「相続税がかかると分かってから相談する」のではなく、「かかるかどうか分からない段階から相談する」ほうが、選択肢は広がりやすくなります。
第三章 書類収集と財産調査の進め方
すべてを相続人だけで抱え込まない
税理士と正式に契約を結ぶと、本格的な書類収集と財産調査がスタートします。ここで大切なのは、「すべてを相続人だけで抱え込まない」という発想です。
戸籍謄本の取り寄せ、不動産登記事項証明書の取得、残高証明書の請求などは、税理士事務所が委任状に基づいて代行・サポートできる部分も多くあります。特に、本籍地が遠方にある場合や、転籍・婚姻歴が多い場合は、戸籍収集だけでも相当な時間と手間がかかります。
「プロが対応した方が早く、かつ漏れも少ない」という場面は少なくありません。こうした業務の一部を専門家に依頼することで、ご家族の負担を軽減できる場合も多いでしょう。
プラス・マイナス両方の財産を洗い出す
財産調査の段階では、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も必ず確認します。
預貯金、株式、投資信託、生命保険、不動産などの「目に見えやすい資産」だけでなく、
借入金、個人の貸付金、連帯保証債務、未払いの税金なども含めて洗い出す必要があります。
また、通帳の過去の入出金履歴を確認し、生前贈与や名義預金と見なされる可能性がある取引がないかをチェックすることも重要です。こうした点を曖昧なままにしておくと、税務調査で指摘を受け、後から追徴課税となるリスクが高まります。相続財産の全体像をしっかり把握したうえで、節税の余地があるかどうかを検討していくことが、無理のない申告につながります。
財産調査は、一度で完璧に終わることはほとんどありません。最初に判明した情報をもとに大枠を把握し、その後のヒアリングや追加資料で少しずつ精度を高めていく作業です。
「最初から全部を出さなければ」と身構える必要はありません。むしろ、途中で新しい情報が出てきたときに、その都度柔軟に修正できるようにしておくことが大切です。
特に名義預金・生前贈与・保険金などは、税務調査でもチェックされやすいポイントのため、早い段階から専門家と一緒に整理しておくと安心です。
不安な時には、電話やオンライン面談など、利用しやすい相談スタイルを選んでいただくことも可能です。

第四章 財産目録と評価のポイント
財産目録は「共通の土台」になる資料
集めた情報をもとに作成する財産目録は、相続税申告と遺産分割協議の両方において「共通の土台」となる重要な資料です。ここが曖昧なまま進めてしまうと、
「そんな財産があるとは聞いていなかった」「評価額の根拠が分からない」といった不信感につながり、家族関係がギクシャクしてしまうこともあります。
税理士は、財産の種類ごとに評価方法を選択し、その根拠となる資料を整理しながら、第三者が見ても理解できる形で財産目録を作成していきます。不動産、預貯金、有価証券、保険金、退職金、事業用資産など、一つひとつの評価の根拠が説明できる状態にしておくことが大切です。
不動産評価は税額を大きく左右する
特に不動産の評価は、専門性が高く、申告内容によって税額に大きな差が出る部分です。
路線価図や評価倍率表を用いながら、土地の形状、間口・奥行、利用状況、借地権や借家権の有無、小規模宅地等の特例が使えるかどうかなど、多くの要素を総合的に判断していきます。
これらを丁寧に検討することで、法律の範囲内で正しく、かつ過不足のない評価額を導き出すことができます。都市部の土地は思っている以上に評価額が高くなることも多く、固定資産税評価額だけで判断していると、相続税評価とのギャップに驚くケースも少なくありません。
整備された財産目録があるだけで、「この土地は将来誰が住むのか」「この預金は葬儀費用としてどこまで残しておくか」「事業用資産は誰が承継するか」といった具体的な議論がしやすくなります。
感情論だけで話し合うのではなく、「事実」と「数値」をベースに冷静な対話ができる環境をつくる意味でも、財産目録の整備は非常に重要です。
評価の根拠をセットで整理しておくことで、相続人間の納得感が高まり、将来のトラブル防止にもつながります。
相続財産の内容が複雑な時ほど、専門家のサービスを上手に活用しながら作成していくことをおすすめします。
第五章 申告書作成と納税方法の検討
申告書のドラフトは「1か月前完成」が理想
財産目録と遺産分割の方針が固まると、いよいよ相続税申告書の作成に入ります。相続税申告書には多くの別表や付表があり、各種特例を適用する場合はそれぞれに対応する明細書や証明書を添付する必要があります。
相続人が複数いる場合には、誰がどの財産を取得し、どのように税額を負担するのかを整理しながら作成していきます。
理想的には、申告期限の「1か月前まで」には一度ドラフトを完成させ、相続人全員で内容を確認する時間を確保しておくと安心です。
この時点で、節税の観点から見て妥当な分割になっているかどうかを再確認することも重要です。
申告書の内容を共有することで、「この評価で本当に良いのか」「この特例を使うかどうか」といった点を相続人全員で確認でき、後からの行き違いを減らすことができます。
納税方法と資金計画を早めに検討する
納税方法については、基本は金銭一括納付ですが、資金状況によっては延納(分割納付)や、例外的に物納を検討することもあります。延納を利用する場合は、担保の提供や利子税の負担が発生し、物納では不動産などの資産をそのまま納税に充てる代わりに、厳しい要件が課されます。
どの方法が適切かは、相続人の年齢や生活状況、今後の収入見込み、不動産の利用方針などによって大きく変わります。そのため、複数パターンのシミュレーションを行ったうえで判断することが大切です。
納税資金の準備は、相続税申告全体を通じて常に意識しておきたいテーマです。
不動産を売却するのか、借入を利用するのか、保険金で賄うのかなど、選択肢ごとにメリット・デメリットがあり、「ギリギリになって慌てて選ぶ」と不利な条件になりがちです。できるだけ早い段階から方向性を共有しておくことで、期限直前になって不利な売却や高い金利での借入をせざるを得なくなるリスクを下げられます。
申告書の中身ばかりに意識が向きがちですが、同時に「どうやって納税資金を準備するか」を検討しておくことがとても重要です。
不動産の売却や借入には時間がかかるため、早め早めのシミュレーションを心がけましょう。必要な時には、銀行との調整や売却スケジュールの検討を行いながら、現実的なプランを一緒に組み立てていくことも可能です。
第六章 申告後のアフターフォローと今後の対策
名義変更と「その後の暮らし」の設計
相続税申告が無事に終わっても、相続に関わる作業がすべて完了したわけではありません。
不動産の名義変更が済んでいるか、預貯金や証券口座の名義変更が完了しているか、生命保険や年金の手続きに漏れがないかなど、一つひとつ確認していく必要があります。
また、今回の相続をきっかけに、将来の二次相続や生前贈与の方針を見直すご家庭も多くあります。どの財産をどのタイミングで誰に承継していくのか、税金だけでなく家族の想いやライフプランも含めて整理していくことが重要です。こうした将来設計は、事前の準備次第で節税の幅が大きく変わることもあります。
税務調査への備えと書類の保管
相続税は、税務調査が行われやすい税目の一つと言われています。申告内容に問題がなければ過度に恐れる必要はありませんが、万が一調査が入った場合に備えて、評価の根拠資料、通帳のコピー、遺産分割協議書、各種証明書などを整理して保管しておくと安心です。
税理士法人ヤマトでは、申告後も必要に応じて税務調査対応や二次相続対策の相談に応じています。
「申告して終わり」ではなく、「その後の暮らしまで含めたサポート」を大切にしており、家族の将来を見据えた視点からのアドバイスも行っています。相続に関連する業務は一度きりではなく、長期的な視点でのサポートが重要です。
評価の根拠や通帳の動き、遺産分割の経緯などを整理しておくことで、税務調査が入ったとしても落ち着いて対応できるようになります。
書類整理が苦手な方も、どの書類をどのように保管しておくべきかを一緒に確認しながら進めることが可能です。

まとめ|迷ったら早めに専門家へ相談を
ここまで見てきたように、相続税申告は、相続発生直後の初期手続きから始まり、相続人の確定、相続財産の調査、財産目録の作成、遺産分割協議、相続放棄や限定承認の判断、申告書の作成、納税方法の検討、そして申告後のアフターフォローや将来対策まで、多くのステップが連続して発生するプロジェクトです。
それぞれの場面で法律・税務の知識が求められ、必要書類も多岐にわたります。情報が錯綜する中で、一つひとつの手続きを正確に行うのは、相続に慣れていない方にとって非常に大きな負担です。
だからこそ、すべてを一人で抱え込まず、早い段階で専門家に相談することが重要です。税理士法人ヤマトでは、相続人や財産の整理から、遺産分割の方向性に関するアドバイス、相続税申告書の作成、申告後の二次相続対策まで、一連の流れを一緒に整理しながら進めていきます。ご希望に応じて、電話でのご案内や面談予約の受付、無料相談枠の設定など、利用しやすいサービス体系も整えています。
相続は、単に財産を分ける作業ではなく、「これまで家族が築いてきたものを、次の世代へどのような形で引き継いでいくのか」を考える機会でもあります。相続税の手続きに追われて本来の意味を見失ってしまうのは、とてももったいないことです。
本記事を通じて、必要な段取りや注意点が少しでもクリアになり、「自分たちのペースで、しかし期限はきちんと守りながら」相続の手続きに向き合うきっかけになれば幸いです。
「これで合っているのか」「他にやるべきことはないか」と不安を抱えたまま進めるよりも、早めに相談して不安を一つずつ解消していく方が、結果的にご家族全員にとって良い形になります。
迷ったら早めに専門家へ。次の一手が決まるだけで、不安の大半は解消します。
税理士法人ヤマトでは、相続に関する各種業務・サービスについて、事前の電話相談や面談予約も可能ですので、以下の窓口からどうぞお気軽にご連絡ください。